触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
【ふたりの世界】
「えっ!?ミスコン!?」
そんなある日、ボソッと言って縮こまる奈那に俺は声を荒げていた。
ミスコンってあのミスコン!?
何人かエントリーされてその年一番の美女を決める…とかいうやつ!?
美の競技だよね!?
アナウンサーとかが獲ってるやつだよな!?
「う、うん……私もよくわからないままエントリーされてて」
「で、結果は…?」
「グランプリ……獲った」
マジか!すげぇ……!!!
「え、奈那凄いじゃ〜ん!」
「そう言うママも獲ったんでしょ」
「エヘ、バレた?」
「涼子も!?」
「涼子さんも!?」
親父と同時に立ち上がっちゃったよ。
何なんだよこの母娘。
レベル高過ぎるぜ。
看護科は4年生になると出場しなくなるから初めのうちに独断でエントリーされるらしい。
「母娘でグランプリ……」
「本当まぐれだよ?内容も把握しないまま勝手にエントリーされててドレスアップされて舞台に上げられちゃったんだから」
「見たかった……」
「ちょ、やめてよ…絶対無理、本当恥ずかしかった」
そんな全力で阻止しなくても……
俺、彼氏だよ?
彼女がグランプリ獲るとこ見れなかったなんて悲し過ぎる……
エントリーされたことも聞いてなかったし。
「ほら、そんな言い方しちゃ祐翔くん可哀想だよ」と涼子さんのフォロー。
いつもありがとうございます。
「ごめん……だってエントリーされてもそれで終わっちゃうこともあるしさ?獲れたから言えるわけであって…」
そっか、はしゃぐだけはしゃいで結果獲れなかったら恥ずかしいのか…?
だからずっと黙ってたんだ!?
わかった、納得。
それなら俺でも言わないや。
「で、奈那は自己PR何したの?」
「「自己PR!?」」
またしても親父とカブる。
それ聞かれて真っ青になったの見逃さないよ。
そんなのあるなら何したの?
俺だって気になる!!
「いや……その、えーっと」ってしどろもどろ。
もはや3対1だからね。
「そこに……ピアノがあったから」
「ピアノ弾いたの!?弾けるの!?」
まだ知らない部分あったんだ……
そっちの方がショック。
すかさず横から涼子さんが
「小学1年から6年生くらいまで習ってたよね」と説明してくれた。