触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「誘拐しに来ちゃった」って俺だけを見て言うんだもん。
手を引いて「乗って」と助手席のドアを開ける。
後輩たちには「じゃあ連れて帰ります」と微笑みバイバイしていた。
き、聞こえてます……恥ずかしい。
めっちゃ視線感じる。
かなり目立ってる。
運転席に颯爽と乗り込む横顔。
どの角度からも見惚れてしまうほど。
「ごめん、かなり待った?」
「ううん、着いて……10分……いや15分くらいかな」
「すぐ電話くれたら良かったのに」
「そうしようと思ったんだけどさ、あの子たちにすぐバレて話し込んじゃって……大丈夫、待ってる時間も楽しかったよ?」
ハンドルに両手を添えながらこっち見てるとか、神アングルだよ。
ジーッと見てクスクス笑うんだ。
え?何か可笑しい?
「ヒロ、シートベルト締めて?出発出来ない…」
「あ、ごめん…!」
嬉しくて舞い上がってた。
こんな初歩的なことまで気が回らなくなってる。
慌てて掴んだから伸びてくれないし…!
あれ?あれ?ってしてたら奈那の手が重なってカチッと嵌めてくれた。
わわ、絶対まだ見られてるのにこのシチュエーションはヤバ過ぎる…!!
顔も近い…!
「あ…ありがと」
一瞬目が合ったけど恥ずかしくて逸らしちゃった。
露骨過ぎたかな…!?
外に居る後輩たちに車内から再び手を振り発車する。
横目で運転する姿をチラチラ見てしまっていた。
「今、キスすると思った?」
「えっ!?」
いきなりストレートな質問。
横顔が笑ってる。
またからかわれたのかな。
動揺してるの丸わかりだよな。
「いくらなんでもあれだけ見られてたら私でも出来ないよ」
見られてなけりゃしてたの!?
そうだよな、2人きりなら絶対してた。
お互いキス魔だし。
でも場所が場所なだけにね。
人前でも全然気にしなかった奈那だけどあそこではさすがに…だよね、と笑う。
少し先の信号が赤になり速度も緩める車内で。
「そういや誰かさんには構わずされちゃったな〜?大学前で」
「えっ!?誰にっ!?」
そんな奴、俺が絶対許さないっ!!
キュッと停まった車。
目が合えば腕ごと引き寄せられる。