触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「奈那って誰っ!?」
バチッと目が開く。
あれ?この声……奈那じゃない。
え……?見上げた顔は、桜井さん!?
え、あ、そうだ。
俺もう教室来てて、ヤベ……寝落ちしてた。
「奈那ってお姉さんでしょ?この前行った時そう呼んでたっけ?」
「うわ、えっと…!あの、ごめんなさい……寝ぼけてて」
「寝ぼけててそう呼ぶんだ?」
久しぶりに会話したと思えばこんなことかよ。
最悪だ。
幸い教室には他に誰も来ていない。
「さ、桜井さん早いね?」
「早朝委員会出てたからね」
不機嫌そうに前の席に座られた。
寝起きでこっちも頭回らねぇ!
これは多分……寝ぼけて奈那の名前を口走ったんだよね?
しかも名前呼びとか……
本人の前でもしたことないのに。
ジッと見つめられたまま動けない。
完全に怒ってますよね……?
「押して押して引く作戦だったんだけど無意味だったわけ?」
「え…?」
声が低くて怖い。
え、あの桜井さんだよね!?
「結構好きなんだけどな?長期戦」
「あの、前にも言ったけど俺は桜井さんと似合わないっていうかレベルが違い過ぎて周りに笑われるのがオチだと思うんだ……だから早めに次を探した方が賢明だと」
「は?まだそんなこと言ってるの?だから彼女出来ないのよ」
「うっ………」
今それ言われるとかなり刺さる。
「ふーん、無意識に名前呼んじゃうくらい好きなんだ?奈那さんのこと」
「いや…!それはっ……」
「慌てるってことは確定だね」
「その………そうじゃなくて」
「いい加減認めなよ?楽になっちゃいな?誰にも言わないし」