触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜




「どれくらい切るの?」と先に聞かれてしまった。




「うーん、いつもお任せなんだけど」




ヤバい、奈那に顔触られてる。
めちゃくちゃ距離近いし目が合えば生殺し状態だ。




「そうなんだ〜まどかさん腕は確かだもんね」




まどかさんとは2人を担当してもらっている共通の女性美容師さんだ。




「はい、終わり!」って可愛すぎか!
玄関で靴を履いてると白いファーのついたコートを着てきたから本気で天使かと思った俺は相当こじらせている。






「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」




美容室にて、カット&カラーをオーダーしている奈那から呼ばれる。
俺はカットのみですぐ終わるだろうから待合室で雑誌を読みながら呼ばれるのを待つ。




そういや受験だから色落とすって言ってたな。
黒に戻ったって可愛さは健在だけど。
奈那のカラーリングが始まった途端呼ばれて離れた席に案内された。




「2人一緒に来るの珍しいですね〜?」




「ですよね、同じ人に切ってもらうから時間ずらしてたんですけど今日は一緒に行こうって…」




「ハハハ、お姉さんパワーに圧倒されて?」




「まぁ、勝手に予約入れられてました」





「お家でもあんな感じなんですね?さっきも、私ヤバいよね、めちゃブラコンだ…って自覚症状ありでしたよ?」




明るく笑いながらカットの準備に入る。
もうずっと信頼してお任せしてる美容師のまどかさん。
ウェーブのかかったミディアムショートのお洒落さん。
ま、俺を高校生デビューさせてくれたよね。




今日もお任せでって言おうとしたら
「イメージはもうお姉さんに聞いてますので」って言われちゃった。
マジかよ……いつの間に?
過保護過ぎて笑われてんじゃん。






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