触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜



楽しい時間はあっという間。
もう家の前に着いちゃった。
最後に髪を撫でて少しだけ身を寄せ合った。
自然と手は離れて………




玄関前で改めて礼を言う。




「姉貴、今日は本当にありがとね?マフラーめちゃ温かいよ」




クンクン匂いを嗅いで
「今日ハンバーグじゃない!?やった〜」と明るく家に入ろうとしたら奈那の頭が背中にポンとくっつく。




固まる俺に
「ごめん……もうちょっとだけ、このまま」
ゆっくり手は前に来て抱きしめられた。
背中から伝わる奈那の鼓動。




もう……ドアを開けたら終わりだから。
気持ち切り替えなきゃだから。
同じ家に帰って同じご飯を食べて……
家族に戻らなきゃ。




でも、まだこうしてたいのは俺もだよ。




「今日、楽しかった?」




背中越しの声が少し震えてる気がした。




「うん……楽しかったよ?」




「またデートしてくれる?」




「え、えっと……うん」




「本当に?」




「ていうかそっちこそ俺なんかでいいの?」




「うん……楽しかったから」




「わかった」



「ヒロ……」




やっぱり声震えてる………




「姉貴……?」




「やっぱりもう……姉貴、なんだよね」




「え……?」




「ううん、何でもない」と身体は離れた。
いつも通りの奈那に戻っていて
「今のもカップルっぽいでしょ?」とおどけてみせた。




無理して笑ってる気がしたから髪に触れてしまった。
最後にもう一度……




「家に入るまでまだカップルで良いんだよね?」




「え……?」




背中から引き寄せ前髪にキスを落とした。




「どうしたの?奈那……」




もう一度呼んでみた。
見つめ合えば瞳が揺れてるから抱きしめたくなる。
え……その目は何を言ってるの?
俺はどこで線引きすればいい?







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