触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
店の前を無表情で歩く奈那の肩を抱いた時点で俺は立ち上がっていた。
明らかに嫌がってる。
これってナンパだよな!?
1人で帰るなら声かけてよって言うべきだった。
身体をくねらせて肩の手をどけようとしてる。
思わずそのまま店を飛び出した。
もはや呼び止める純太たちの声すら聞こえてない。
走って追いかける。
「マジで番号教えてよ」って男の声。
大学生だと思うけど怖いとかそんなことより奈那に触れてるその手が汚らしいと思った。
追い越して道を塞ぐ。
立ち止まる奈那の肩を持ち、勢いで男の手を振り払った。
顔を上げた時の眼差し。
安心したのか肩に触れる俺の腕にしがみついてきた。
「奈那…?何してんの?お前、俺の彼女なんだから隣に居なきゃだろ?」
適当なこと言って自分の方に抱き寄せた。
男をジロッと睨みつけたらこのまま続けて威嚇しておかないと。
舐められた時点で俺に勝ち目はない。
「俺の彼女なんで返してもらいますね?」
「チッ!彼氏持ちかよ」
男はそう吐き捨て戻って行った。
ホッと胸を撫で降ろす。
「良かった、俺……彼氏に見えたみたい」と奈那の方を見たら真っ赤な顔して今にも泣きそう。
だから黙って胸を貸した。
「じゃあ少しだけ彼氏面してあげる」
頭を預けてくれるだけでかなり舞い上がってるんだ。
このドキドキは……きっと伝わってる。
「ちょっと怖かった……」
「俺は腹立たしかった……あの男に触れたとこ全部消毒したい気分」
「アハハ……ありがとう」
「頼むから帰り道1人になるならメールして」
「……彼女に悪いじゃん」
やっぱり勘違いしてる。
桜井さんにとっては願ったり叶ったりなんだろうけど俺にとっては都合が悪い。
ラブラブ作戦……継続するか?
それともここで終わらせる?