【短】じっとできない
勝手知ってるで私の部屋に入り込んできた汰一は、ベッドの横を陣取ってガサガサとお菓子の入った袋を弄っている。
私は小さい声で、呟く。
「別に怒ってなんかないよ…」
「うーそだ。朱里亜は昔から怒るとココがぷくってなるんだから」
そんな風に言って汰一は、袋を弄る片手を止めて右頬をつん、と突く。
私は内心、悲鳴を上げたいのを必死に堪えた。
「なんてことすんのよ!このすけべ!気安く触んな!ハゲ!」
「ハゲてねーし。ちぇー…いいだろー?俺達幼馴染なんだし」
そう言われ、私の心に冷水が掛けられた様な気がする。
「っっ」
「そんなことよりさぁー?お菓子食おうぜー…お前何がいい?」
「つーか!か、え、れ!!」
私はなんて言っていいか分からずに、お菓子の袋を開けようとしている汰一の背中をグイグイ押して、無理やり立たせた。
「うぉっ?!じゅ、朱里亜?!」
戸惑っている汰一を他所に、そのまま外に出すと素早くカギを掛けてから、カーテンをシャーッと勢い良く締める。