【短】じっとできない


突然のことに、びっくりしたのか、しばらく外で、

「おーい、朱里亜〜」

と声を掛けてきていたけれど、その内汰一も諦めたのか声が聞こえなくなった。


私はぐるぐるする。

好きな人がいるなら、気安く触れたりなんかしないで。


"幼馴染"なんて言葉で、この心を締め付けないで…。


なんで、好きだなんて気付いてしまったんだろう。

そうでなければ、こんな風に気持ちの均等を崩さなくてすんだのに…。


ぽたり


頬を伝う涙。


まだ、幼馴染以上として何も思い出を作らないまま、私たちは離れ離れになってしまうんだろうか。


「うー…汰一……」


私はどこにもやれない切ない気持ちの塊を持て余して、泣き続けた。





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