【短】じっとできない
「悪いけど、俺付き合う気ないから」
「…っ。誰か好きな人がいるの?」
「さぁね。いてもキミには関係ないよ」
あーりゃりゃ。
なんだかいつもとは、違う感じ?
相手の子、滅茶苦茶泣いてんじゃん。
これ、フォローする人大変そう……。
てか…いつもなら、なんというか、こう…。
『キミとは付き合えない。ごめんね』
みたいな。
そんなゆるーい雰囲気があったようななかったような?
「こーら。朱里亜。立ち聞きなんて行儀悪いぞ」
「うひゃあ…?!」
少しハスキーめの低い声が、突然左耳をかすめて、私の口からは変な声が出た…。
それを聞いて、くつくつと楽しげに笑う汰一は凄く嬉しそうだ。
私はそんな汰一をキッとにらんで「ばか!」と言う。
放課後の幼馴染の告白現場には何度か遭遇したことがある。
それは裏庭だったり空き教室だったり…色々。
その度に、上手く隠れられたと思うのに、汰一はすぐ私のことを見付けて、こうして声を掛けてくるんだ。
最初は別に何も感じなかったし、それでよかった。
でも。
ずっと続くとなんでか胸の中がモヤモヤとして、頭が痛くなる。