【短】じっとできない



「悪いけど、俺付き合う気ないから」

「…っ。誰か好きな人がいるの?」

「さぁね。いてもキミには関係ないよ」


あーりゃりゃ。
なんだかいつもとは、違う感じ?
相手の子、滅茶苦茶泣いてんじゃん。

これ、フォローする人大変そう……。


てか…いつもなら、なんというか、こう…。

『キミとは付き合えない。ごめんね』


みたいな。
そんなゆるーい雰囲気があったようななかったような?


「こーら。朱里亜。立ち聞きなんて行儀悪いぞ」

「うひゃあ…?!」

少しハスキーめの低い声が、突然左耳をかすめて、私の口からは変な声が出た…。

それを聞いて、くつくつと楽しげに笑う汰一は凄く嬉しそうだ。

私はそんな汰一をキッとにらんで「ばか!」と言う。


放課後の幼馴染の告白現場には何度か遭遇したことがある。

それは裏庭だったり空き教室だったり…色々。

その度に、上手く隠れられたと思うのに、汰一はすぐ私のことを見付けて、こうして声を掛けてくるんだ。


最初は別に何も感じなかったし、それでよかった。



でも。

ずっと続くとなんでか胸の中がモヤモヤとして、頭が痛くなる。


< 2 / 29 >

この作品をシェア

pagetop