【短】じっとできない
その場に置き去りにされた私たちは、見つめ合ってから少しだけ気まずい感じになった。
少しの沈黙。
でも、それを先に破ったのは汰一の方だった。
「俺に好きって言われて…嬉しかった?」
こくん、と一つ頷く。
すると、汰一は…ぎゅーっと真正面から私のことを抱き締めてから、うっとりとした溜息を吐いた。
「良かった…昨日、朱里亜に拒否されて、目の前が真っ暗になった。このまま嫌われたらどうしようって、気が気じゃなかったんだ…」
相変わらず、汰一の束縛は柔くて、何時でも逃げられてしまうくらいだった。
けれど、私はそんな汰一のことを初めて抱き返して…離れたくないと意思表示をした。
「朱里亜?」
「私こそ、嫌われたらって思ってたし…幼馴染なんかで終わるの嫌だもん」
「…………」
「…?汰一…?」
「あーもー!朱里亜、滅茶苦茶可愛過ぎ。そんなこと言われたら…抑え効かなくなる……」
その言葉と同時に、前髪を掻き上げられおでこに一つキスを落とされた。
「…っ。汰一…」
私が名前を呼ぶと、そのキスが瞼や鼻の先に落ちてきて…。
すりっ
頬を撫でられる。
「好きだよ、朱里亜。俺のスイッチ入れたからには…もう、逃さないよ…?」
「……ん……」
羽根のようなふんふわとしたキスが、2度3度と降って来て…それから深くて甘いキスを交わした…。