【短】じっとできない
汰一の好きな人って、一体誰なんだろう?
それは、初めて告白現場に出くわした時から思っている疑問。
昔から、なんでも包み隠さずにお互いのことを話し合ってきたのに…。
好きな人いたなんて、まさに寝耳に水だった。
汰一は、ベタな漫画に出て来る美少年よりも、もっともっと爽やかイケメンで。
目元にある3つの泣きボクロがこれまた色気たっぷりで、私からしたら、コイツ何様?!というくらい、天才鬼才の持ち主。
自慢ではないけれど、私だってそこそこモテるのに…なんか腹が立つ。
「はーぁ。好きな人、かぁ…」
私はかじかむ指に息を吹き掛け、遠くを見やる。
外はなんだか、季節外れの嵐が来そうだ。
そして、教室に掛けられた時計は既に下校時間を過ぎていて、周りには誰もいなくなっていた。
そうか…親友のまりちゃんは彼氏とデートだったっけ。
それをふと思い出してから、もう一度深い溜息を吐くと、のろのろとカバンを持って、そのままパチン、と教室の電気を消して昇降口へと向かった。