【短】じっとできない


こつこつ、こつこつ

ちょっぴりヒールのある、ローファーを鳴らして汰一の隣を歩きながら、頭を抱えたい気持ちでいっぱいの私。


いつから?
そんな対象に、汰一のことを見ていたんだろう?

ちくんちくんと痛む胸は、今汰一の隣でドキドキに変わっている。

二人で歩いていて、こんなに緊張したことなんか一回もなかったはずなのに…。


な、ん、か!


凄くムカつく。


びしっ


「…なに?朱里亜…?痛いんだけど?」


なんとなく、沈黙という間を作りたくなくて、汰一の腕を叩くと片目をつむって、わざと痛いと主張してくる。



この、余裕がやっぱりムカつく!


「なんでもない!」

「えー?なんで怒ってんの?」

「あーもー!うるさい!うるさい!」


私はごまかしようが分からなくなって持っていたカバンを振り回して、怒った顔をした。


…いつまでも、このままじゃいけないとは思っているけど、離れたくない、離したくない。


そんな気持ちの繰り返し。

汰一は、そういうのってどう思ってるんだろう?



< 6 / 29 >

この作品をシェア

pagetop