僕を壊したのは君だから。
今日は学校からバスで2時間ほどの山奥で一泊二日の宿泊学習がある。


ほとんど遠足みたいなもので、親睦を深めることに重きをおいているイベントなんだけど。



……今日は私服。遠目で見た朝比奈くんはセンスもよくて、当たり前のように注目の的だった。


「香田さん……今日、晴れてよかったよね」


「……うん」


「こ、香田さんは……。あ、おやつ食べる?」


「いらない」


どうしよう。まだ行きのバスに乗ったばかりなのに香田さんと会話が全然続かない……!



……私ってこんなに喋れないひとだったんだなって再確認した。


高校に入ってから、本当にだめだな。環境って、こうも人を変えるんだ……。




中学まで学年みんな幼馴染っていう生温い世界に首まで浸かっていたんだから、こうなっても仕方ないよ。



と、自分を慰める。


「……」



こうしてたいして会話が成立することもなく、二人とも到着するころには爆睡していた。



たどりついたキャンプ場のそばには普通の宿泊施設があって、私たちはそっちに泊まることになるんだけど……。



こうして広場で待機している今も香田さんと私は気まずい沈黙に満ちている。


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