僕を壊したのは君だから。
宮岡さんと初めて喋ったのは、桜の咲く放課後の校庭だった。



あれは俺が芝生で寝ていたときのこと。




「……なくん、朝比奈くん……っ!」



閉じた瞼の向こうから俺の名前を呼ぶ声が聞こえて、目を開けると、



桜の舞う青空を背景に、心配そうな顔が俺を覗き込んでいた。



……宮岡さんだ。



風に揺れる長い髪をさわりながら、自信なさげに目をおよがせて。


「えっと……こんなところで寝てたら風邪ひくよ」


緊張でもつれたような喋り方。



よく見れば肌寒いのにカーディガンを脱いで自分の腕にかけている。



もしかして、起こすかカーディガンをかけるかで迷ってくれたのかな。


……そういう人っぽいよね。



教室で宮岡さんを見かければほぼ100%で誰かに尽くしているから。




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