私たちの春は白
私がそう言うと、「よくお菓子を買いに来たよね」と雪ちゃんも懐かしそうに笑う。お昼を食べたばかりだけど駄菓子屋に入り、ラムネやベビースターラーメンを買った。

駄菓子屋を出た後、公園のベンチに二人で座る。海がここからでもよく見えた。

「急に会えなくなったし、葵ちゃんのおばあちゃんもいなくなっちゃったから、何かあったんじゃないかって心配してたんだ」

「連絡できなくてごめんね。おばあちゃん、認知症になっちゃったから一緒に暮らすことになったんだ」

「えっ、そうなの?」

「うん……。もう家族のことも忘れてる。今日は、おばあちゃんが「海に行きたい」って言ってたから来たんだけど、記憶は戻らなかった」

「そうだったんだ…….。それで、葵ちゃんは家で介護とかしてるの?」

「学校に福祉を学ぶコースがあるんだ。本当は、美容師の勉強をするつもりだったけど、人が多くて福祉を勉強することになった。最初は嫌だったけど、今はすごく楽しい」

お互いのことを話し、笑う。穏やかな時間は緩やかに過ぎていった。
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