私たちの春は白
「おばあちゃんから目を離すなんて、俺は介護福祉士失格だ……!」

「落ち着いて!私も探してみる。見つかったら連絡するね」

「ああ、頼む」

電話を切り、おばあちゃんの行きそうなところを探してみることにした。ここからだと和菓子屋さんが近い。

私は、走って和菓子屋さんへと急いだ。



「……ここにもいない」

おばあちゃんを探し続けて一時間。おばあちゃんの行きそうなお店を覗いたが、おばあちゃんの姿はどこにもない。

「事故?それとも事件?」

嫌な想像がグルグルと頭の中を支配していく。私は、落ち着こうと海を見つめた。夕焼けがもう空で燃えている。それが恐ろしいほどに美しく、まるで大きな出来事が起きそうだった。

「……海?」

今朝の車での会話を思い出す。おばあちゃんは、よく海に来ていた。徘徊には必ず目的がある。何かを探していたり、どこかへ行こうとしたり……。

私の足は、迷うことなく浜辺へ向かっていた。

何かが起こる気がする。それが起きた時、私が悲しむのか、それとも幸せを感じるのかはわからない。ただ何かが起こると思った。
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