私たちの春は白
「僕もまだまだ知らないことばかりだし、諦めるのは早いと思うよ」

颯がそう言って、私に微笑む。そう言われると安心してきた気がする。

「そうそう!みんなまだまだひよっこだ!」

その声に前を向くと、伊藤先生がホワイトボードに何やら文字を書いている最中で、結衣が興味深そうにそれを眺めている。

『個別化』

『意図的な感情表出』

『統制された情緒的関与』

『受容』

『非審判的態度』

『自己決定』

『秘密保持』

伊藤先生が書き終えると、詩織が訊ねる。

「先生、それは何ですか?」

伊藤先生はニコッと怪しげに笑う。和たちは顔を見合わせ、嫌な予感を感じ取った。

「次の授業で説明するよ〜」

伊藤先生はそう言うと、「トイレ、トイレ〜!」と言いながら教室を出て行った。伊藤先生、女性がそんなことを大声で言っちゃダメでしょ……。

私たちは苦笑いをした。



チャイムが鳴り、私たちは席に座る。伊藤先生はチャイムが鳴ったと同時に、スキップしながら教室に入ってきた。うん、不気味。

「二限目は、介護の大切なことをしたいと思いま〜す!!」
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