私たちの春は白
伊藤先生がそう言うと、結衣の目が真剣になった。伊藤先生は一つ一つ解説していく。

「個別化は、利用者さんを個人としてとらえます。例えば認知症の人だからと言って、みんなに同じ介護ができるわけではありません。認知症の人ではなく、山田さんとか鈴木さんという風にとらえます」

「意図的な感情表出は、利用者さんが泣いたり笑ったりするといった感情を大切にすることです。利用者さんが笑ってくれたりするのは、信頼してくれている証ですよ!」

「統制された情緒的関与は、利用者さんが泣いてしまった時に自分も一緒に泣いたりしないように、自分の感情をコントロールすることです。利用者さんの悲しい話を聞いて、一緒に泣くカウンセラーさんはいません!!」

結衣や颯は一生懸命メモを取っている。チェリーは「あれ、なんて読むんですか?」と詩織に訊いている。太陽と海斗は、「覚えられる自信がない……」と呟いている。

みんな、真面目だなぁ……。覚える気すら出てこないよ……。

「受容は、利用者さんをありのままに受け入れることです。認知症の山田さん、障害を持った田中さん、その人の考えなどを否定せずにありのまま受け止めます」
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