私たちの春は白
「わあ!面白そう!!」

詩織がチェリーと同時に言う。そしてチャイムが鳴り、私たちは席に着いた。

……嫌な予感しかしない。初めて福祉の授業を受けた時よりも、もっと重いもの。

しかし、伊藤先生は教科書を開く。そして中身を読み始めた。

認知症は昔、「痴呆」や「ボケ」と呼ばれていて、家族が介護をするのが当たり前だった。家族で介護ができなくなると、精神科へ入院させるか老人ホームへの入所だった。

しかし、老人ホームなどでは、身体拘束やつなぎ服を着せる、薬による抑制などの行為が行われていた。1972年に有吉佐和子が認知症について書いた本、「恍惚の人」が出版され、認知症は社会でも取り上げられるようになったが、施設での虐待は終わらなかった。

「ひどい……」

チェリーがポツリと呟く。颯も海斗も、顔をしかめていた。

私は、何も考えないようにしていた。心を空っぽにしたかった。それでも、認知症という単語を見ると思い出すのはおばあちゃん。
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