私たちの春は白
「葵ちゃん、迎えに来ましたよ」

小学生の時、雨が降っていたのに傘を忘れて困っていたら、おばあちゃんが迎えに来てくれた。帰り道、おばあちゃんは私の話を微笑みながら聴いてくれた。

「葵ちゃん、よかったらこれ食べて」

もらってきたケーキやプリンを、私にくれた。おいしそうに食べる私を見て、おばあちゃんは嬉しそうだった。

「大丈夫、泣かなくてもいいよ」

お母さんと喧嘩して泣いている時、おばあちゃんはずっとそばにいてくれた。抱きしめて、背中をさすってくれてーーー。

「葵ちゃん?」

伊藤先生の声に、みんなが私を見つめる。しばらくみんなに見つめられて、私はようやく自分が泣いていることに気付く。

「どうしたの?具合悪い?」

伊藤先生に質問されればされるほど、涙があふれて止まらない。伊藤先生の優しさと、おばあちゃんのくれた優しさが重なる。

「ちょっと杉浦先生のところに行こう」

伊藤先生にそう言われ、私は席をゆっくり立ち、教室を出た。
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