私たちの春は白
「葵は、介護って何だと思う?」

不意に、杉浦先生が私に訊ねた。突然の質問に、私は「へっ?」とマヌケな声を出す。

「……えっと……おじいちゃんたちを笑顔にする……ですか?」

私の答えに杉浦先生は、「うん、それも正解だな」と呟く。……ん?それも?

「介護に答えなんかないんだ。百人いたら、接し方は百通り。正解のない職だからこその魅力がある」

杉浦先生と福祉や全く関係ない話をしながら、少しずつ私はおばあちゃんのことを話した。最初から最後まで涙で、自分が心に思ったことを話すだけだから、何もかもがグチャグチャで、厳しい先生なら「整理してから言え」と言うかもしれない。

それでも、杉浦先生は「そんなことがあったんだね」と私の言葉の一つ一つに耳を傾けてくれた。

「認知症の人は、記憶を失ってしまうけど、それはとても素直になるということなんだ」

そう杉浦先生は教えてくれた。

「嬉しいこと、嫌なことを素直に教えてくれる。今はまだ受け止めきれないかもしれないけど、おばあちゃんと向き合ってあげてな」
< 49 / 113 >

この作品をシェア

pagetop