私たちの春は白
その時、私の横を仲良く話しながら一組のカップルが通っていく。その女性を見て、私は思わず「あっ!」と言ってしまう。

その女性は白い杖をついていた。白杖は、目の不自由な人がつく杖だ。歩行の際に前方の路面が安全かどうかを確認したりするのに使う。視覚障害者の「目」となる。

「あの女の人、目が不自由なんだ……」

仲良く買い物をする二人を見ながら私が言うと、「いや、全盲とは限らないよ」とお兄ちゃんが言う。

「白杖を使うのは、全盲の人だけじゃない。ロービジョン(弱視)の人も使うんだ。道にある点字ブロックが黄色いのも、ロービジョンの人が見やすい色だからなんだ」

「へえ〜」

そういえば、前に海斗が視覚障害について話していたっけ。視覚障害の人が食事をする時は、クロックポジションという方法を使うということ。これは、テーブルの上に置かれた食べ物を時計の短針に例えてどこに何があるのかを教える方法。例えば、「一時のところにご飯があります」など。
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