私たちの春は白
「何?」

「あ、葵です!!」

耳が遠いのか、何回かおばあちゃんは聞き返してきた。私は大きな声で名前を言い、持ってきたメモ帳にも書いた。

「どこから来たの?」

「お兄ちゃんと一緒に来ました。五日間、実習に来ました」

おばあちゃんと話した後、私はお兄ちゃんに呼ばれる。今からおむつを交換するみたいだ。

排泄物が付いておむつは汚れている。当然だけど、臭いもやっぱりあるわけで……。でもお兄ちゃんは説明をする。

「寝たきりの人だと、褥瘡ができているかもしれないから、おむつを交換した時や入浴介助の時に体をしっかり観察するんだ。変化があればすぐに処置をしてもらう」

お兄ちゃんはそう言いながらおむつを交換していく。その手際はとても丁寧だけど、素早い。学校で私たちが習った時とはスピードなどは全然違う。

「……すごい」

私はポツリと呟いた。

その日の午前中はおむつ介助や着脱介助と様子を見たり、食事の配膳を手伝った。午後からは、入浴した人の髪をドライヤーで乾かしたり、おやつの用意を手伝ったり、コニュニケーションを取ったりして一日目は終了。
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