私たちの春は白
利用者さんは私によく話しかけてくれて、コニュニケーションに困ることも少なかったと思う。

「実習、どうだったか?」

お兄ちゃんに訊かれ、私は素直に「楽しかった」と答えて笑った。



実習の日が私は楽しみになっていた。実習の中で、実際に介助をさせてもらうこともあり、私はドキドキしながら介助をする。

見ているだけでは、どの介助も簡単そうに見える。でもやってみて、実際は大変なのだとわかった。介助ってとても力がいる。だって利用者さんは体が動かない人もいるから。

「葵、長崎さんとコミュニケーションを取っていてくれ」

お兄ちゃんに言われ、私は長崎さんと話をする。たれ目のおばあちゃんだ。

「あんた、可愛い。どこから来たの?」

「そんなことないですよ!××から実習に来ました」

長崎さんの趣味である裁縫の話や、私の周りで流行っている音楽の話、長崎さんの子どもの頃の話などをしていた。その時、バタバタと職員さんがお兄ちゃんに声をかける。
< 71 / 113 >

この作品をシェア

pagetop