アーリーとエマ。
エマはエプロンドレスで、その少年ことアトソンを退屈そうに見ていた。ここサラタウンの波止場で。

波がよせてはかえす。


潮が干潮へと水位を下げ、再び満潮を迎える。月の動きは干満(かんまん)を左右していた。それに魚は左右され、さらに潮流がサラタウンの近海に流れ込む。
それらはいたって単純な真理といえる。

サラタウン近海で船が行き交う。帆船や蒸気船だ。エマ商会は、海運業を手がけ、中古の蒸気船を二隻運用していた。
天気は温暖だ。春の風がときおりサラタウンにやってくる。

エマはそれから、うとうとと眠った。日だまりが心地よく身体を暖める。波が寄せてはかえすように。

アトソンが優しくエマを守る、とそんなことをエマは怪しく妄想し、くすくすと内心の穏やかなこころで笑った。それは晴れた日の希望だ。

だから、晴れた日に希望を感じるのは簡単なのだ。暖かい日差しに身を委ねればいいのだから。それに人間の多くは太陽を上回る仕組みを未だに作り出していないものだ。
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