アーリーとエマ。
成長
[成長]

ときおりエマ商会の娘であるエマは成長とは何かを考える。

「釣りにでも行かない。アトソン」
アトソンとエマはサラタウンの防波堤で釣りをする。きらきらと魚が透き通った海を泳いでいる。太陽がまぶしい。

「この大地とひとつとなることが人間には必要。大地は循環しているのですからね。

だけど、小説を書くのは大地から切り離されている」

ため息。

「太陽や海がきれいだ。それを伝えるためになぜあたしたちは小説を使うの」

アトソンは困惑。

「海賊の血よ。
あたしたちには海賊の血が流れている。
サラタウンは海賊がいたのよ」

それを重々しい事実として。

「小説が伝えるのは素朴な現実ではなく、重層化された、人間の生だと思うわ。重層化されているからこそ残す必要があるのだと思うのよ」
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