お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「·····本当にいいんですか?」



「Bien sûr!(もちろん!)·····そういえば、そもそもなんでダンスの練習なんて?」



「あー、えっとそれは·····」



賞金のために·····とは恥ずかしくて言えなかったけど、お母さんのためにオーディションを受けることは尚さんに伝えた。



一応教えてもらう身だから、ある程度のことは言っておかないとね。



「沙那ちゃんがオーディション·····!C’est bien!(いいね!)俺、全力で応援するよ!」



「あはは·····ありがとうございます。」



相変わらずのハイテンションにはついていけないけど、応援してくれる人がいるだけでなんだか心強くなる。




「そう言えば尚さんはどうしてダンス習ってたんですか?」




尚さんの口から1回もダンスなんて言葉は聞いたことない。



ましてや、芸能界の事なんて話題に触れさえしなかったのに。



え、まさか独学とか言わないよね?




「·····知りたい?」




不敵な笑みを浮かべながら私に問いかける尚さん。



その妖しくも大人っぽい雰囲気に思わず息を飲む。



「知りたい・・・です。」



そして催眠術でもかけられているかのごとく、自然と口が動いた。



「そうだなあ・・・俺のお願い聞いてくれたら教えてあげる。」



そう言った尚さんは満面の笑みを浮かべて、声を弾ませていた。
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