お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「·····はい。」



「Quoi?(え?)もっと驚かないの?」



大きくて真ん丸な目をさらにくりくりさせて驚く尚さん。



「驚くも何も、モデルやってそうな雰囲気でしたもん。」



逆に今まで自分は完全なる一般人だと思っていたのか?



イケメンというものは謎だ。謎すぎる。



「それなら話が早いね」



実はね·····と言って、またも真剣な面持ちになった。



「本当は、俺は日本でアイドルになりたいと思ってた。」



「それは·····なんでですか?」



「うーん、大切な人と同じ夢を叶えたかったから·····かな」



「そんな時、日本でアイドルグループの大規模オーディションがあったんだ。」



「え!?ナイスタイミングじゃないですか!」



「そうだよね。俺も受けようと思ってた。そのために毎日ダンスや歌の練習もたくさんした。でも·····」



「·····なにかあったんですか?」



一瞬聞くことを躊躇しかけたけど、モヤモヤを残したままは嫌なので勇気を振り絞って聞いてみた。



「·····俺の父親がフランスで危篤状態になってね·····行かないと一生後悔すると思ったんだ。」



そう話す尚さんの顔は、少し寂しそうだった。
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