お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「ここ、座ろうか。」



「·····はい。」



少し話したいことがある、と言われて連れてこられたのは、尚さんのイメージとは似ても似つかない河川敷だった。



それにしてもここかなりうちから近いな·····



「ここ、俺の思い出の場所なんだ〜」



そう言うと、尚さんは遠い目をしながら川を眺め始めた。




「·····この前話したこと覚えてる?」



「あー、"アイドルになりたかった"って話ですか?」



「Ah bon!(そう!)」



·····その話とここの場所が何か関係しているのかな。



「俺には小さい頃から仲良かった親友がいたんだ。」



尚さんは少し切なそうな声で話し始めた。



「そいつと俺は芸能界に憧れててさ。同じ夢を持ったもの同士すごく居心地がよかった。」



「へぇ·····なんかいいですね、そういうの。」



純粋にそういう友情憧れるなあ·····



我にもなく尚さんを羨望の眼差しで見つめてしまう。



尚さんは私の思わぬ熱視線に照れた様子ながらも、そのままま話を続けた。



「実はそのオーディションも一緒に受けようって話になってたんだけど·····」



「ドタキャンした、と。」



「言い方に悪意があるよ!」



ギャーギャーと騒ぎ出したので無視。



「·····その人との思い出の場所が、ここってことですか?」



「そう!よく二人で夜遅くまで夢を語り合ったものだよ·····」


そう言って瞼をゆっくりと閉じてしみじみとし始めた。
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