お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
学校から帰った時には、テーブルの上に「ごめん」と書かれた紙切れだけが一枚ぽつんと置かれていて。



異様だった。



その紙切れの周りから重苦しい空気がこちらに向かってくるようで。



······信じられない。信じたくもない。



それが、温かいはずの家が一瞬にして冷めきった瞬間だった。



当時携帯を持っていなかった私。



お兄ちゃんの電話番号なんて知っているはずもなくて、思うように連絡を取ることもできない。



人は信じられない状況に陥ると自然と笑いが込み上げてくるんだって初めて実感したのも確かこの時。



「······ははっ、聞いてよお母さん。私、一人になっちゃった······」



いくら助けを求めても、それに応えてくれる人はもういないっていうのにね。



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