お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「······そんなこと考えてくれてたの?」

「へ?」

「全部口に出てたよ。」



おバカさーん、なんて言って私をニヤニヤと冷やかすような目で見つめる。



おい何やってるんだ私の口!!もっと筋肉引き締めろ!!



あまりの恥ずかしさに、力づくで口角を引っ張り役に立たない口を痛めつける。



「あははっ、まいっちゃうなあ沙那ちゃんには。」



困ったように笑いながらそう呟く尚さん。



「すみません······」



故意じゃないことだけわかって欲しい。勝手に動いたの本当に!!



「でも、ありがとね。」

「·····?お礼言われるようなことしてないんですけど······」

「そんなことないよ。··········練習頑張ってる沙那ちゃん見てたら、あいつのこと思い出しちゃってさ。」



あいつ、っていうのは多分親友さんのこと······だと思う。



「あー、だからこの話を。」

「そう!······あ〜あ、沙那ちゃんには俺の過去色々バレちゃうな〜」



ミステリアスな方がかっこいいのに〜、なんて悔しそうにぼやいている。



まあ、楽しそうだしいっか。



私もいつか、尚さんに恩返ししなきゃ。噂の親友さんも見てみたいしね。



······そのためにはまず一次審査を通過しないと!
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