お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「携帯返してください!!」

「あ〜!盗られた!」



もともと私のですから、と心の中でツッコミを入れつつ、スマホの画面を確認する。



すると画面には通話中の文字が。



通話中······?え、嘘!電話繋がっちゃってるし!!



これは私が取り返す瞬間に<ruby>咄嗟<rt>とっさ</rt></ruby>に押したな。



キッと尚さんを睨むと、少しも悪びれる様子はなく笑顔で私に手を振っている。



ふざけんな!!



······はあ。気まずいけど、ここまできたら出るしかない。



今にも震えそうな手で恐る恐るスマホを耳に当てる。



「さ、騒がしくて申し訳ありません······」

「いえいえ、突然電話をかけてしまったのはこちらですので。ご心配なく。」



あ、思ったよりちゃんとした人だ。



しかもめちゃくちゃ声かっこいい!これがいわゆるイケボってやつ······!?



初の生イケボに興奮しながらも、未だ正体不明な電話主を警戒中。



「ありがとうございます。それであの······どちら様ですか?」

「芸能事務所 "production NOVA"の者です。結城沙那さんでお間違いありませんか?」

「へ!?あ、はい!」



やばい、絶対キョドってるのバレてる!



というか事務所から直々の電話って怖すぎるんだけど!?



「実は、オーディションの件でお伝えしなければならないことがありまして。」



なんてタイムリー。お兄さん!私たち数十秒前までその話してましたよ!



「単刀直入に言いますと、補欠合格が取り消しになりました。」

「え」



のんきにツッコミを入れていた私の脳は、一瞬にして思考停止した。
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