お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
軽く言い合いをしているうちに、早くも入口まで辿り着いてしまった私たち。



入口には屈強そうな<ruby>強面<rt>コワモテ</rt></ruby>の警備員のおじさん。



さすが大手芸能事務所。セキュリティは万全だ。



「今日17時にここの事務所で待ち合わせしている結城沙那と申します。」

「結城さんですね。お話は聞いています。こちらへどうぞ。」



あれ、話してみると意外と優しそうな雰囲気。



嬉しいハプニングで思わず頬が緩む。



「·····ありがとうございます!」

「どうも〜」



当たり前のようにサラッと付いてくる尚さん、神経図太すぎない?



「ちょっと君、結城さんしか話は聞いていないんだけど。」



ナイス<ruby>強面<rt>コワモテ</rt></ruby>警備員さん!



そうだよね!おかしいよね!?この人さっさと追い出して!!



そんな尚さんは小さくため息をつくと、意を決したように警備員のおじさんに話しかけた。



「ねぇ警備員さん。俺の大事な彼女がこんな大都会に行くって言うから心配で付いてきちゃったんだ······」

「は、はあ·····」



そりゃそうなるわ。



<ruby>強面<rt>コワモテ</rt></ruby>警備員さんは「だから?」と言いたげな顔。



······って、サラッと彼女設定にされたし!



「そういわれましても······」



警備員さんがスーパー問題児尚さんに困惑していると、どこからともなくカツカツという規則的なヒールの音が響いてきた。
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