お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「どうしたの?」



うわ、めちゃくちゃ美人さん······!



目大きい!髪の毛ふわふわ!スタイル良い!



······モデルさんかな?それともスタッフさん?



「あ、佐伯さん。この方がどうしても彼女について行きたいと······」



そう言って尚さんのほうをちらっと見る警備員さん。



それにつられるかのように美人なお姉さんも尚さんに目を向ける。



チャンスだと言わんばかりに口角を上げた尚さんは、お姉さんの手を掴んでぐいっと腰を引き寄せた。



「お姉さん。俺、彼女のことが心配でしょうがないんだ。入れてくれる······?」




そして目をうるうるさせながら上目遣いでお姉さんを見つめる。



出たー!ぶりっ子尚さん!



でも甘い。ここは芸能事務所。普通の人たちとは訳が違うんだから。



それに警備員のおじさんもきっと今頃引いて······



「あらやだ!イケメンね!いいわよ〜!ゆっくりしていってね♡」

「どうしよう······俺男なのにときめいちまった······」




······ここの甘々セキュリティどうにかしたほうがいいと思うんだけど。



「お姉さん、警備員さん、ありがとね!」



満面の笑みでお礼を言われたお姉さんと警備員さんは顔がとろけている。



一方の尚さんはしてやったりという顔で私にピース。



「彼女さん、あんな素敵な彼氏がいて羨ましいわ〜♡」

「え、いや彼氏じゃな·····」

「俺の自慢の彼女なんです〜!」

「~~~~~~~!」



突然口を押さえつけられて上手く言葉が出なくなった私。



犯人である尚さんを睨みつけようとすると不意に耳元で囁かれる。



「······設定、守って。」



あ、そういうことね。······ってちがーう!!
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