お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「そういえば、あれからお兄ちゃんとはうまくやってるの?」

「あー······、うん。もちろん!」



咄嗟に肯定はしたものの、自分でも顔が引きつっているのを感じる。



······お母さんに初めて嘘ついちゃったな。



初めての嘘は嬉しいサプライズにしたかったな、なんて今更ながら思うけどきっともう遅い。



「······じゃあ、そろそろバイトだから帰るね。」



少しどんよりしてしまった空気から逃げるようにして病室を出ようとしたその時



「沙那。」



お母さんが私を呼び止めるなんて珍しい。



いつになく真剣な顔をしたお母さんに不思議な緊張感を覚えながらも、後に続く言葉をじっと待つ。



「いつもありがとうね。」



そう言ってまたふっと微笑むお母さん。



ああ、お母さんには本当敵わないな。
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