お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
尚さんや。あなたは一応一般人でしょうが。



なにしれっと紛れ込んでんの。



······確かに一瞬違和感なくて気づかなかったけども。



「あら〜沙那ちゃん早かったわね。」

「特にやることもなかったので。」

「そんなに畏まらなくてもいいのよ〜?でもちょうど時間がかなり巻いてたし、グッドタイミングね♡」



夏生さんは私の言葉を社交辞令として受け取ったらしい。



本当のことなんだけど。······まあいいか。



「それで私は何をすれば······?」

「そうねぇ······沙那ちゃんはどういう路線を目指してるの?」

「······路線?」

「ほら、アイドルとか女優とかいろいろあるじゃない。」



なるほど。どういう活動を中心にしていくか、ってことか。



うーん、漠然と「グランプリを獲る!」としか考えてなかったから特に求めるものもないし。



「私はオーディションに受かるなら何でもいいです。お笑い芸人でも、なんでもやります!任せてください!」



そして胸を張りドヤ顔。



ふふふっ。例えこの身が朽ち果ててでも、火の中水の中飛び込んでやろうじゃないか!



「ぷっ、お笑い芸人って······っ!」



私の渾身の一言を聞いた尚さんの肩が小刻みに揺れている。



絶対笑ってるよね?「ぷっ」って言ったもんね?



······よーし、待っててね尚さん。



後でたっぷりみぞおちチョップ喰らわせてあげるからね!
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