お兄ちゃんが芸能人だなんて信じられません!
「あのさあ、」



突然響いた声。



この綺麗で透き通った声には聞き覚えがある。



「何の目的も目標もないやつが、グランプリなんて取れると思ってんの?」

「あず!」



やっぱり東くんか······!



でも<ruby>心做<rt>こころな</rt></ruby>しかテレビの時より口が悪いような·····?まあ、気のせいか!うん!



溢れ出すファン心を必死に抑えながらも、負けじと東くんへと言葉を返す。



「おっしゃることはごもっともです。でも··········」



言わなきゃ。



私はお母さんのためにここまで来たんじゃないか。



今言わなくてどうする。



そしてこの緊迫した空気を吸い込むように大きく息を吸って、そのまま吐き出した。
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