偽りを捨てて。
「フィルター?そんなのかかってないわよ。入学式の時から正真正銘の天使だったわ、美織は」
入学式、あぁあの時はまだ偽るのに苦労してたっけな。
「12月になった今でもあんたは変わらず天使なのね……」
勝手に感動にひたっている茉白。
そう、私のこの甘い仮面に一番嵌められたのは茉白だ。
まんまと私の偽りに騙されている。
そう考えると少し胸が苦しくならないこともないけど……。
だからこそ、茉白には余計に本性をさらけ出せなくなっているところはある。
「…茉白は私を疑わなさすぎなのよ……」
「え?なんか言った?」
私の小声は聞こえるはずもなかった。
「ん?何も無いよ?それよりお腹すいたね。早く食べようよっ」
「あー、そんな無邪気な美織も可愛い」
「はいはい」
いつものお褒めの言葉を流して、私たちは屋上の扉を開けた。