懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
そうしている間にも容赦なく雷がゴロゴロと唸るように鳴り、里帆を震え上がらせる。
見かねた亮介は繋いでいた手を引いて里帆を抱き寄せた。
ふわりと香るのは同じシャンプーの匂い。亮介の温もりに触れ、雷への恐怖が薄らいでいく。
その分、亮介を強烈に意識してしまう。逞しい腕や胸板を感じて、今度は違う意味で胸が高鳴った。
「こんな夜更けに男の部屋にやって来て、なにごともなく帰れると思う?」
冗談とも本気ともつかない言葉を投げかけられ、鼓動が大きく弾む。
「す、すみません、あの……」
身じろぎをしても、腕が外れる様子はない。
亮介にそう言われて初めて、自分はとんでもない行動をしているのだと気づいた。
「ったく、なんの我慢大会だよ。好きな女の子をこうしているのに、自制が利く俺を褒めてくれ」
あれだけ鳴っていた雷の音が耳に入らなくなる。
切羽詰まったような声は、ジョークに聞こえない。