懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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亮介は、歩くスピードが人より速い。
ただでさえ足が長いため、里帆はついていくのにひと苦労する。
「このあと午後三時から経理部長との打ち合わせが入っております」
急きょ社長に呼び出され、同じフロアにある社長室で話を終えた亮介は、腕時計を確認してさらに足を速めた。
「あと二分か。よし急ごう」
里帆が秘書になるまで自己管理していたためか、それとも性格的なものなのか、亮介は時間をきっちり守るタイプである。
大阪出張の夜、亮介の腕の中にいた里帆は、雷が遠のいたのがわかった途端パッと離れ、「ありがとうございました!」と自分の部屋へ逃げるように戻った。
あれから三日。亮介の里帆に対する態度は以前と変わらない。告白めいた言葉を使っておいてそれっきり。
戸惑っているのは里帆のほうだけなのだ。気持ちを翻弄されるだけされ、ポーンと放っておかれている気分だ。
あれはなんだったの?と疑いたくなる。