懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
対して里帆は亮介を意識して、副社長室に一緒にいるだけで心が落ち着かなくなって仕方がない。笑顔を向けられただけで鼓動が飛び跳ね、言葉を交わすだけで顔が熱くなる。
もうどうにも誤魔化せない。里帆は亮介を好きなのだ。
あの夜はきっかけに過ぎない。秘書として彼のそばにいるようになってから、恋心がじわりじわりと募っていくのをどこかで気づいていた。
相手はマリオスターの副社長。気持ちを律しようと思ってもどうにも止まらない。
亮介も少なからず自分を想ってくれていると知ったから余計だ。
「もうやだな……」
心の声がつい口をつき、前を歩いていた亮介が「なにが嫌だって?」と足を止めて振り返った。
なんて耳がいいのか。聞こえないくらいの小さな声だったのに。
里帆も急ブレーキをかけたものの、突然だったため惰性で亮介にぶつかりそうになる。
「あ、いえ、なんでもないです」
そんなつぶやきまで拾わないでほしいと慌てて否定した。