懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「この前の大阪出張、副社長になにかおいしいものをごちそうになった?」
〝大阪〟と〝副社長〟というキーワードふたつで、里帆は簡単に動揺する。やましいことはないのに、まばたきは激しくなり目は泳いだ。
「あれっなに? もしかして副社長となにかあった?」
勘が冴えた人間じゃなくても、里帆の動揺ぶりを見ればそう感じて当然。テーブルのワゴンが邪魔だったのか、由佳はそれをずらして身を乗り出した。
「なにもないよ!」
「えー? なにもない人がそんなにうろたえる? 正直に話してごらん?」
おもしろいネタをつかんだとばかりに由佳がニヤニヤする。
「ほんとだってばー。展示会に同行して、たこ焼きとお好み焼きをごちそうにはなったけど」
これは本当だ。嘘はない。
「それだけであんなに慌てないでしょ」