懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
さっきは寒さと緊張でそれどころではなかったのだ。
モノトーンでコーディネートされた部屋は三十畳近くあり、キッチンまで見通しがいい。センスの良さは普段のスーツの着こなしと同じだ。
「サイズ、大丈夫だったか?」
里帆がバスルームから出たのに気づいた亮介がソファで顔を上げた。
「はい、ありがとうございました。でもこれ……」
「あぁそれは、下にいるコンシェルジュに頼んだ」
「そう、なんですか」
そんな人がいるのもさっきは気づかなかった。洋服の手配までお願いできるらしい。
「明日の着替えも用意してあるから」
「明日の分も!?」
つい素っ頓狂な声が出た。
「シャワーだけ浴びて帰るとは言わせないぞ」
「ちっ、違うんです。明日の洋服までなんて申し訳なくて」