懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
ドキンと跳ねた鼓動ごと体が飛び上がる。教師にいきなり指名された生徒のように「はい!」と返事をして、ぴょんと立ち上がった。
「長い耳でもつけたらウサギみたいだな」
クスッと笑われて恥ずかしい。
「なにか飲む?」
聞かれて、ぶんぶん首を横に振る。そんな余裕はない。
「まぁそう言わずに付き合って」
亮介は濡れた髪をタオルで拭きながら冷蔵庫へ向かい、缶ビールを二本手にして里帆の元へ戻った。
冷えたビールを手渡しされ、里帆も亮介の隣に腰を下ろす。早速プルタブを開ける音が部屋に響いた。
亮介に倣ってひと口飲んだものの、緊張で味なんかひとつもわからない。
「髪、濡れたままだと風邪ひきますよ」
タオルで拭ってはいるものの、まだ水が滴っている。