懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「里帆がいなくなるかもしれないと思って急いだんだ」
名前を呼び捨てにされる照れ臭さと、いつも余裕たっぷりの亮介を慌てさせることができたくすぐったさに、里帆のほうも困らされる。
「いなくなったりしないです」
目を合わせたら最後。すぐにも甘い雰囲気が舞い降りてきそうで、それもまた気恥ずかしい。里帆は笑みを浮かべながら目を逸らした。
「それじゃ、里帆が乾かして」
「あ、ではドライヤーを持ってきますね」
気が紛れるのはありがたい。
そそくさと立ち上がり、里帆がパウダールームからドライヤーを持ってくると、亮介はニコニコ顔で彼女のほうに体を向けた。
スイッチを入れてあたたかい風を彼の髪にあてる。指通りがよくサラサラだ。
しばらく真剣に髪を乾かしていると、ふと亮介と目が合う。
「……どうかしましたか?」
「里帆を見てた」
「恥ずかしいからやめてください」
「なんで。かわいいなって思ってたんだけど」