懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
真顔で言われて目が泳ぐ。
「そんなことないです。……すっぴんだし」
今頃、素顔をさらしていると気づいた。好きな人の前で、それも想いが通じ合ってすぐにすっぴんとは、ずいぶんといい度胸だと我ながら思う。
亮介は里帆からドライヤーを奪い、スイッチを切った。
「ほかの男には絶対に見せるなよ」
真っすぐな瞳が里帆を射抜く。照れ臭さから避けて通ってきた甘いムードが、思いのほか早くやって来た。
亮介の眼差しがいきなり熱っぽくなる。
「里帆」
声まで甘い。落ち着いていたはずの心がふわふわと浮き、体まで軽くなった気がする。
膝に置いていた手を亮介が取り、指を絡める。立ち上がった亮介に引っ張られるようにして里帆が立つと、彼は「おいで」と里帆の手を引いた。
この先になにが起こるかわかっているため、期待と不安が入り交じって胸が苦しい。