懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「どちらへ行かれるおつもりですか?」
「決まってるだろ」
里帆のところ以外にどこがある。
「ですが、これからお客様がお見えになる予定です」
成島の言葉に足を止めた。
マリオスターの主要相手先の中でも、一位二位を争う取引額のアパレルメーカーの社長が来社する予定だ。
約束の午前十時まであと二十分。今さらキャンセルはできないだろう。
間の悪さは自分が招いた罰だ。
「それを終えたら引き留めるなよ」
成島は目礼だけで答えた。