懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
いつもそうだった。休みが仕事でつぶれることはしょっちゅう。それでも疲れたような顔を見たことはなく、パワフルに動き回っていた。
「予定通り社長に就任されたんですか?」
「一応はね。堂々と社長を名乗るには、まだまだだ」
それが謙遜なのは、短い期間とはいえ亮介の秘書をやっていた里帆にはわかる。
きっと社員をぐいぐい引っ張る、良きリーダーに違いない。
「秘書はどうなりましたか?」
一番の気がかりはそれだった。
無責任にも突然仕事を放って消えたのだ。新しい秘書も、業務を立て直すのに最初は困ったのではないか。
「いない」
「……え?」
予想外の返答だった。あの夏の日、成島はたしかに『替えの秘書は見つけてあります』と言っていたはず。
「里帆以外の秘書ならいらないって言ったのを忘れたか?」
「社交辞令ですよね?」