懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「そんなわけあるか。俺はそういうのは嫌いだ。これも言ったはずだぞ?」
たしかに亮介が以前、そう言っていたことはある。
「でも社長なのに。秘書がいないと大変です」
亮介がひとりでなんでもできるのは知っている。でも大企業の社長に秘書がいないのでは、対外的に格好がつかないのではないか。ひとりで複数人の秘書を従えている社長だっている。
「いらないって言ってるだろう? それより体調は大丈夫か? お腹のほうは? つわりってやつはもうないのか?」
「亮介さん、いっぺんに聞き過ぎです」
里帆がクスッと笑う。
「仕方ないだろ。心配なんだよ」
真剣な表情で反論する亮介を見て、うれしい反面、里帆も身が引きしまる思いがした。
そうして思ってくれる人がすぐそばにいる幸せは、あたり前ではない。少なくとも亮介と再会しなければなかったことだ。