懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
今朝、年長の秘書である川内恭子から身だしなみについてのチェックがあり、里帆はなんとか合格点をもらえ、ひと安心といったところだ。
ドアの開く気配がして、慌てて立ち上がる。そのまま亮介の顔も見ずに頭を下げた。
「立川里帆と申します。本日より副社長秘書としてこちらに異動となりました」
ゆっくりと頭を戻して見た亮介は、どこか不満げな表情をしている。
ほかの秘書と比べて劣った容姿だと思われたか。里帆はヒヤッとせざるを得ない。
「成島、俺の話を聞いていなかったのか? 秘書は必要ないと何度言えばわかるんだ」
秘書室長の成島にため息交じりで吐き捨てるように言う。
里帆は呆気にとられてふたりを見た。
亮介に劣らず背の高い成島は、それでも平静さを崩さない。怯まずに亮介を見つめ返した。
里帆は、必要とされてここへ来たわけではないらしい。まさか副社長の亮介本人の了承を得られていないとは。